「着物をおはしょりなし」で着たい方の多くは、おはしょりの意味や必要性、そして現代の着こなしとの関係について疑問を抱いているかもしれません。
おはしょりは一体何のためにあるのか、そもそも正しい着物 着方とは何なのか、着物に慣れていない方にとってはわかりにくい部分も多いでしょう。
最近では、対丈着物を女性が着こなすスタイルが注目されており、振袖や七五三などのフォーマルな場面と、カジュアルに着物を楽しむ日常とでは、求められる装いも異なります。
また、身丈が合わない着物を対丈に直すことで、おはしょりを作らず着こなす方法も広がっています。
さらに、浴衣はおはしょりはなしでOK?ないとおかしい?といった細かな着方の違いも意外と気になるポイントではないでしょうか。
そして、見落とされがちなのが、着物を左上に着るのはなぜいけない?という基本的なマナー、これを誤ると大きな印象の違いにつながります。
本記事では、これらの疑問を丁寧に解説しながら、着物をおはしょりなしでも美しく着こなすための知識とコツを紹介していきます。
伝統を踏まえながらも、自分らしい着物スタイルを見つけるためのヒントが詰まった内容です。
- おはしょりの役割と必要性
- 対丈着物の特徴と女性に向いている理由
- フォーマルとカジュアルで異なる着物の着方
- おはしょりなしで着る場合の注意点や工夫
着物のおはしょりなしはアリ?NG?
- 何のためにある?
- 対丈着物を女性が着るメリットとは
- 着物を左上に着るのはなぜいけない?
- 浴衣はOK?ないとおかしい?
- 七五三には必要?
何のためにある?
おはしょりは、着物の丈を調整するために作られた工夫です。着物はもともと仕立て直しを前提とした衣類であり、着る人の身長にぴったり合わせるものではありません。
そのため、身丈が長い着物を美しく着るために、腰のあたりで生地を折り返して調整する必要が出てきます。これが「おはしょり」です。
また、おはしょりには体型を整えて見せる効果もあります。腰回りに一段生地があることで帯との境目が自然になり、見た目にも安定感が生まれます。
特にフォーマルな場では、このおはしょりの有無が装いの完成度を左右することもあります。
一方で、着付けの際にはおはしょりの長さや形をきれいに整える手間がかかります。時間がないときや初心者にとっては、ここが難しく感じるポイントかもしれません。
また、着物の種類や着用シーンによっては、おはしょりを不要とするスタイルもあり、その判断にはTPOの理解が求められます。
このように、おはしょりは単なる飾りではなく、実用性と見た目の美しさを両立させるために考えられた大切な要素です。
ただし、すべての着物に必要というわけではなく、カジュアルな場面では対丈での着こなしも受け入れられています。
対丈着物を女性が着るメリットとは
対丈で着物を着る女性には、多くのメリットがあります。対丈とは、おはしょりを作らず、身丈と着丈を一致させて着るスタイルのことです。
特にカジュアルなシーンや短い身丈の着物を着たい場合に向いています。
まず、最大の利点は「身丈が短くても着られる」という点です。アンティーク着物など、現代の標準身長には合わない短めの着物でも、対丈であれば無理なく着用できます。
タンスに眠っていた祖母の着物やリサイクルショップで見つけた掘り出し物を活かせるのは、大きな魅力です。
次に、着付けが比較的簡単になるという点も見逃せません。おはしょりを作る必要がない分、着る手順が少なくなり、整える工程も減ります。初心者や自分で着物を着たい人にとっては、負担が軽くなるでしょう。
見た目の面では、すっきりとした縦のラインが強調されるため、スタイルアップ効果があります。
おはしょりがない分、脚が長く見えるシルエットになり、現代のファッションとも相性が良くなります。ブーツや洋服とのミックススタイルにも合わせやすいため、若い世代からの人気も高まっています。
ただし、対丈はフォーマルな場面には向きません。結婚式や入学式のような「改まった席」では、おはしょりのある着方が一般的とされており、対丈は略式と見なされることがあります。
また、正しい着方を知らないと着崩れしやすくなる点も注意が必要です。
このように、対丈着物は実用性と現代的なおしゃれを兼ね備えたスタイルです。シーンに合わせて取り入れれば、着物をより自由に楽しむことができるでしょう。
着物を左上に着るのはなぜいけない?
着物を左上、つまり「左前(ひだりまえ)」で着るのは、日本では避けるべき着方とされています。それは、左前が亡くなった方の着付け方法として定着しているからです。
生きている人がこの着方をすると、不吉だと思われたり、マナー違反と見なされることがあります。
この風習の背景には、古代中国や奈良時代の文化の影響があります。奈良時代には「右衽(うじん)」という制度により、庶民は着物を右前に着ることが定められました。
左前は高貴な人や、死後の世界で神仏に仕える者に許される特別な着方だったのです。そのため、現在でも左前で着物を着るのは「死装束の着方」として一般には用いられません。
また、自分では右前に着たつもりでも、鏡越しやスマートフォンのインカメラで反転してしまうことがあります。特にSNSに投稿する際には、画像が左右反転していないかを確認しましょう。
知らずに左前のように見える写真を投稿してしまうと、縁起が悪いと感じる人もいるかもしれません。このように、着物は相手から見て「右側が前(右前)」になるように着るのが一般的です。
言い換えれば、「左前は避けるべき」というより、「右前が正しい」と覚えることが、混乱を防ぐポイントになります。
浴衣はOK?ないとおかしい?
浴衣におはしょりが必要かどうかは、TPOや個人の好みによって判断が分かれるところです。結論としては、浴衣は対丈(おはしょりなし)でも着て問題ありません。
ただし、場面や着こなし方によっては工夫が求められます。
本来、浴衣は湯上がりに羽織る簡単な衣類として発展してきたため、気軽さが重視されています。そのため、正式な着付けとは異なり、おはしょりを作らない対丈スタイルでも許容されています。
特に夏祭りや日常的なお出かけでは、対丈で涼しげに着る方も少なくありません。
一方で、「おはしょりがないと寝間着のように見える」という意見もあります。見た目の問題だけでなく、着崩れしやすくなる可能性もあるため、腰紐の位置や帯の締め方には注意が必要です。
また、裾が広がらないように下前をしっかり整え、裾すぼまりのシルエットを意識すると美しく見えます。
おはしょりが取れない場合でも、帯の位置を工夫したり、腰紐の結び目を高くすることで着姿を整えることは可能です。
どうしてもおはしょりを見せたい場合は、あらかじめ身丈の長い浴衣を選ぶと安心です。
このように、浴衣は「おはしょりなし」でも着こなせますが、周囲に違和感を与えないようにするには、全体のバランスやシルエットを意識することが大切です。
カジュアルな中にも丁寧さを感じさせる着付けが、印象を大きく左右します。
七五三には必要?
七五三で着物を着る際、おはしょりは基本的に必要とされています。特に女の子の着物では、身丈が長く仕立てられており、おはしょりを作ることで全体のバランスが整い、格式ある見た目になります。
おはしょりを作る理由のひとつは、成長を見越して大きめに仕立てた着物を調整するためです。
七五三は子どもの健やかな成長を祝う儀式ですから、その日に合わせて体にぴったりのサイズにするよりも、将来的にまた着られるよう余裕を持たせるのが一般的です。
おはしょりは、そうした長めの着物を美しく着こなすための工夫といえます。
ただし、小さなお子様の場合、動き回るうちに着崩れてしまうことも少なくありません。このとき、しっかりとしたおはしょりの処理をしておくことで、着崩れを最小限に抑えることができます。
また、見た目にもお祝いらしい装いとなり、記念撮影などの場にもふさわしい印象を与えるでしょう。
一方で、3歳の祝いでは「被布(ひふ)」というベストのような上着を着るため、着物の帯やおはしょりが隠れることもあります。
この場合はおはしょりがなくても見た目に問題はないため、着付けが簡単になるという利点もあります。
このように、七五三の着物ではおはしょりを基本としながらも、年齢や衣装のスタイルによっては柔軟に対応することが可能です。お子様の負担が少なく、かつ華やかな装いになるよう工夫することが大切です。
着物をおはしょりなしで美しく着る方法
- 正しい着方と着崩れ防止の工夫
- 振袖ではNGなのか?
- 対丈に直す方法と費用の目安
- アンティーク着物を対丈で楽しむコツ
- 正統派スタイルとの違いとTPOの考え方
正しい着方と着崩れ防止の工夫
着物を美しく着こなすには、正しい着方とともに、着崩れを防ぐ工夫が欠かせません。特に長時間外出する場合や写真撮影などがある場面では、着付けの安定感が見た目に大きく影響します。
まず基本となるのは「右前」に着ることです。これは着物全般のルールで、自分から見て左側の衿を上に重ねるのが正しい着方です。
これを間違えるとマナー違反になるだけでなく、縁起が悪いとされる場合もあるため注意が必要です。
次に、着物の前合わせを美しく保つには、下前(自分から見て右側の衿)を少し高く上げ、上前を被せるように重ねることがポイントです。
こうすることで、裾が広がりにくくなり、見た目もすっきりと整います。
さらに、背中の縫い目(背縫い)を体の中心に合わせることで、左右のバランスが良くなります。胸紐を結ぶ際には衿がずれないよう水平を意識し、必要であれば衿にクリップをつけて固定すると安心です。
長襦袢の着方にも注意が必要です。衣紋を抜きすぎないようにしつつ、衿元がしっかり重なるように調整します。ここで形が崩れてしまうと、その後の着物もきれいに着られません。
また、長時間着ていると徐々に緩んでくることがあります。このため、外出前にはできるだけ鏡で全身をチェックし、気になる部分があればその場で直しておくことをおすすめします。
こうしたポイントを意識して着付けを行うことで、より美しく、着崩れしにくい着物姿が実現できます。
初めて着る方でも、工程をひとつひとつ丁寧に行うことで、安心して和装を楽しむことができるでしょう。
振袖ではNGなのか?
振袖をおはしょりなしで着ることは、基本的には正式な場面では避けたほうが良いとされています。
振袖は未婚女性の第一礼装であり、成人式や結婚式など改まった場に着ていくことが多いため、一般的な着付けマナーを守ることが求められます。おはしょりがきちんとあることも、その一環です。
ただし、すべてのケースでおはしょりが必須というわけではありません。たとえば、祖母や母の代から受け継がれた振袖の中には、身丈が現代の体型に合わないものもあります。
身丈が足りず、おはしょりが出せない場合には、対丈での着用を検討することも選択肢となるでしょう。
このようなケースでは、着方に工夫を加えることが重要です。帯の位置を高めに設定したり、裾のシルエットを整えることで、対丈でも美しく見せることが可能です。
また、装飾としてしごき帯や帯飾りを使えば、おはしょりのなさを目立たせず華やかさを保つこともできます。
ただし、対丈で振袖を着る場合は、見る人によってはマナー違反と捉えられる可能性もあります。特に、親族が集まるフォーマルな場では、年配の方の目を意識する必要があるかもしれません。
私的な写真撮影やカジュアルなパーティーなど、やや自由度の高い場面で対丈スタイルを取り入れるのが無難です。
振袖をどう着こなすかは、TPOに応じた判断が大切です。思い出の詰まった振袖を無理に仕立て直さず着たいという気持ちを大切にしつつ、場に合った着こなしを心がけましょう。
対丈に直す方法と費用の目安
手持ちの着物を対丈に直したい場合、方法はいくつかあります。もっとも手軽なのは、仕立て直しをせずに「着付けの工夫」で対丈風に着こなす方法です。
これは、おはしょりを作らず、腰紐の位置を高くして着丈を調整するだけで済むため、費用はかかりません。ただし、身丈が身長から20cm以上短いとバランスが崩れる可能性があります。
一方、本格的に対丈用に直したい場合は、和裁士に仕立て直しを依頼することになります。具体的には、身丈を短くカットし、裾や肩のラインなどを調整して全体のバランスを整えます。
この作業には専門的な技術が必要なため、費用の相場は15,000円〜30,000円程度です。素材や柄の配置によって作業内容が異なるため、事前に見積もりを取ることが大切です。
また、裄丈や袖丈なども調整する必要がある場合は、追加料金が発生することがあります。たとえば、裄丈の出し直しを行う場合は、5,000円〜10,000円ほどの追加費用を見込んでおくとよいでしょう。
最近では、最初から対丈仕様で作られている「今様小袖」や「簡単着物」といった商品も登場しています。
これらは着付けが簡単で、現代的なライフスタイルに合わせた仕様になっているため、仕立て直しに不安がある方にはおすすめの選択肢です。
どの方法を選ぶにしても、自分の着用目的や頻度、予算に合わせて判断することが大切です。無理に高額なリフォームをするよりも、着付けの工夫で対応できる場面も多くあります。
手持ちの着物を上手に活用し、対丈スタイルを楽しんでみてはいかがでしょうか。
アンティーク着物を対丈で楽しむコツ
アンティーク着物を対丈で着ることで、身丈が短くても美しく装うことが可能になります。
特に、大正~昭和初期の着物は現代の体型に比べて小さめに作られているため、対丈での着こなしと相性が良いです。
まず重要なのは、腰紐の位置を通常よりも高め、みぞおちあたりで結ぶことです。これにより、着丈が足りない場合でも裾がちょうど良い位置に収まり、全体のバランスが整います。
帯は半幅帯や兵児帯など軽めのものを選ぶと、アンティークのやわらかい雰囲気と調和しやすくなります。
次に意識したいのが、裾のシルエットです。裾が広がらないよう、下前を引き上げて裾すぼまりの形をつくると、後ろ姿まで美しく見せることができます。
さらに、背中の縫い目(背縫い)が体の中心を通っているかもチェックしましょう。着崩れの予防にもつながります。
小物や足元の工夫も対丈スタイルを引き立てます。アンティーク着物には、ブーツやレースのインナーを合わせた和洋ミックススタイルがよく合います。
たとえば、裾からレースの裾除けをチラ見せすると、個性的でおしゃれな印象になります。
ただし、古い着物は生地が弱っていることがあるため、締め付けすぎないように注意が必要です。腰紐や帯をきつく締めすぎると、生地に負担がかかり破れてしまう可能性もあるため、着付けの際は力加減を意識しましょう。
このように、アンティーク着物を対丈で楽しむには、着付けの工夫と細部の気配りがポイントです。
時代を超えて受け継がれた着物を、現代のライフスタイルに合わせておしゃれに着こなしてみてはいかがでしょうか。
正統派スタイルとの違いとTPOの考え方
対丈で着るスタイルと、いわゆる正統派の着付けとの違いは、主に見た目の印象と用途にあります。正統派の着方では、おはしょりを作るのが基本です。
これは着物の長さを調整する役割を果たし、見た目にも格式を感じさせる着こなしとされています。
一方、対丈スタイルはおはしょりを作らず、着物の丈をそのまま活かして着る方法です。すっきりとしたシルエットが特徴で、足が長く見えるなどスタイルアップ効果も期待できます。
ただし、略式と見なされることもあり、フォーマルな場には適していない場合があります。
TPOの観点で考えると、対丈スタイルはカジュアルなシーンに適しています。友人とのお出かけや街歩き、アートイベントなど、自由な装いが歓迎される場では、対丈の着物が個性を引き立ててくれます。
特にアンティーク着物や和洋ミックスコーディネートと合わせることで、現代的なおしゃれを楽しめます。
一方で、結婚式や入学式、お茶会など格式を重んじる場面では、正統派の着付けが求められることが多くなります。
おはしょりがあることで、着物としての「きちんと感」が伝わり、周囲への印象も良くなります。
また、振袖や訪問着などのフォーマルな着物は、そもそも対丈での着用を想定して作られていないため、無理に対丈にすると着崩れや不自然なバランスになってしまうこともあります。
そうした場合は、身丈の長さや生地の状態を事前に確認しておくことが大切です。
このように、対丈と正統派スタイルにはそれぞれに適したシーンがあります。どちらが優れているというものではなく、着用の場面や目的によって選ぶことが、着物を上手に楽しむコツです。
自分の好みや予定に合わせて、柔軟に着方を使い分けていきましょう。
着物のおはしょりなしスタイルの基本と注意点を総括
記事のポイントをまとめます。
- おはしょりは身丈調整と体型補整のために生まれた機能
- おはしょりなしは対丈と呼ばれる着方である
- 着物おはしょりなしはカジュアルな場で受け入れられている
- 身丈の短いアンティーク着物は対丈で活用できる
- 対丈は着付けが簡単で初心者にも向いている
- おはしょりなしは縦のラインが強調され脚長効果がある
- 浴衣はおはしょりなしでも問題なく着用可能
- 七五三では基本的におはしょりが必要とされる
- 振袖はフォーマルな場ではおはしょりありが一般的
- 左前での着用は死装束とされ避けるべきである
- TPOに応じておはしょりの有無を使い分けることが重要
- おはしょりを整えるには着付け技術が必要
- 対丈に仕立て直すには費用とバランス調整が必要
- アンティーク着物は和洋ミックスで現代風にも楽しめる
- 正統派スタイルとの違いを理解し場面で使い分けることが大切